導電性塗料を塗布した樹脂製縮小モデルのレーダ散乱断面積測定

本ページは,2022年11月に開催された電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会(SANE研)で発表した「導電性塗料を塗布した樹脂製縮小モデルのレーダ散乱断面積測定」(渡邉卓磨,赤嶺賢彦)の内容を,Web向けに再構成して紹介するものです.

目次

概要

レーダ散乱断面積(Radar Cross-Section: RCS)は,レーダ目標の散乱を特徴づける基本的かつ重要な物理量です.近年における車載レーダの普及や,空港などの重要施設の保安検査へのレーダセンシング技術の適用など,レーダは防衛分野のみならず我々の身近な分野でも利活用が進んでいます.したがって,レーダハードウェアや信号処理の設計で要求されるRCSの測定技術についても,今後その重要性がさらに高まることが見込まれます.

本稿では大きく分けて次の二つの事項を検討しました.第一に,完全な金属製モデルによるRCS測定を,導電性塗料を塗布した樹脂製モデル(以降,単に「樹脂製モデル」といいます)の測定によって代替可能かを明らかにします.第二に,ある測定物のRCSを,より小型の縮小モデルの測定により模擬可能かを明らかにします.これらにより,小型かつ低コストな樹脂製モデルで実規模の金属モデルのRCS測定が実現可能なことを示します.

研究の背景

RCSの評価においては,各種の数値電磁界解析によるシミュレーションと,実際の測定物に電波を照射するRCS測定とが行われます.例えば防衛分野におけるステルス機の設計においては,数値電磁界解析によるシミュレーションでRCS解析を行った結果を機体の形状設計へ反映することに加え,設計した形状が実際にRCS低減に寄与するのかを測定することが求められます.このとき,実際に製造する実機と同一の素材で測定モデルを製造することが最も望ましいのは明らかですが,当然ながら測定モデル製造に要する費用の増大は避けられません.特に,候補となる数種類の機体形状を検討する場合,測定モデルの製造コスト低減がもたらす効果は大きいといえます.より安価な樹脂製モデルで金属製のモデルと同等のRCS計測が可能であれば,機体設計のコスト削減に大きく寄与することが期待されます.

また,測定モデルの大きさ自体を縮小して実規模と同一のRCS測定が行えるのであれば,更なる低コスト化に繋がります.よく知られているように,測定モデルが完全導体であることを仮定できれば,元のモデルを \(1/s\) に縮小したモデルを \(s\) 倍の周波数で測定することで,元のモデルと等価なRCSが得られます [4].そこで本研究では,導電性塗料を塗布した樹脂製の縮小モデルを用い,1/20規模モデルをXバンド(10 GHz),1/40規模モデルをKバンド(20 GHz)で測定して,全モデルの測定結果が等価となることを確認することで,樹脂製縮小モデルの有効性を示します.

測定方式

レーダ画像方式の近傍界遠方界変換(NFFFT)

本稿ではRCS測定方式として,近傍界における散乱測定の結果からレーダ画像を生成し,その画像からRCSを算出する方式の近傍界遠方界変換(Near-Field-to-Far-Field Transformation: NFFFT)を用いました.本手法の詳細については文献 [1]〜[3] などを参照してください.

レーダ画像方式NFFFTの概念図
図1: レーダ画像方式NFFFTの概念図((a) 任意軌道による散乱測定,(b) 等価的な点散乱体)

図1にレーダ画像方式NFFFTの概念図を示します.図1(a)に示すように,測定物を取り囲む任意の曲線軌道でアンテナを走査し,軌道上の各位置においてアンテナから測定物に向けて広帯域信号を照射して,測定物からの散乱波を送信と同一のアンテナ位置で収集します(モノスタティック散乱測定).もしくは等価的に,アンテナを固定して目標を回転させる逆合成開口レーダ測定を行ってもかまいません.

次に,図1(b)に示すように測定物を微小な点散乱体の集合でモデル化できると考え,収集した散乱波から点散乱体の位置と散乱強度を再構成します.これはある種の単純化(Born近似もしくは単一散乱近似)された逆散乱問題であり,この結果生成されるのがレーダ画像です.最後に,再構成された点散乱体から電波が放射していると考え,RCSが定義される遠方界(無限遠)を含む任意の位置における散乱界を計算します.つまり,これは与えられた散乱体の位置と散乱強度から散乱界を計算する順散乱問題に対応します.

周波数スケーリング

周波数 \(f\) における測定物のRCSが \(\sigma\) であるとします.このとき,測定物を \(1/s\) に縮小したモデルを \(f’ = s\cdot f\) の周波数で測定して得られるRCSを \(\sigma’\) とすると,\(\sigma\) と \(\sigma’\) の間には次の関係が成り立ちます [4].

$$\sigma = \sigma’ \cdot s^2 \tag{1}$$

この関係式に基づけば,航空機等のRCSを測定する際,実機や実規模のモデルを測定せずとも,周波数さえ適切に設定できれば,より安価に製作可能な小型モデルで実規模モデルのRCSを模擬できることになります.

ここで本稿が着目するのは,導電性塗料を塗布した樹脂製モデルであっても,モデル形状のスケーリングのみで大型モデルのRCSが測定可能かという点です.樹脂製モデルの場合は導電性塗料の塗布によってモデル表面に粗さが生じるため,厳密にいえば縮小モデルにおいてはこの粗さをも縮小する必要があります.しかし,塗装面の表面粗さを任意に制御することは非現実的であるため,実際には形状の縮小のみを行います.この場合の影響を測定評価することが,本稿における周波数スケーリング評価の目的です.

モデル成形材料の検討

成形材料と導電性塗料

モデルの材料費低減の観点からは,可能な限り低密度な材料を成形材料として用いることが望ましい一方で,発泡スチロールなどの極端に低密度な材料は加工精度が悪くなります.そこで本稿では,成形材料として加工精度に優れた発泡系樹脂である三洋化成工業製のサンモジュールを用い,表1に示す密度の異なる2種類の材料を比較検討しました.以降では密度0.64 g/cm3の材料を「高密度材料」,この材料で製作した試験モデルを「高密度モデル」と呼びます.同様に,0.26 g/cm3の材料を「低密度材料」,この材料で製作した試験モデルを「低密度モデル」と呼びます.

名称型番密度
高密度材料サンモジュール MAX0.64 g/cm3
低密度材料サンモジュール SX0.26 g/cm3
表1: 検討する成形材料
切削加工表面の実体顕微鏡写真
図2: 切削加工表面の実体顕微鏡写真((a) 高密度材料,(b) 低密度材料)

図2に,各材料の切削加工表面の実体顕微鏡写真を示します.本材料は発泡系の樹脂であるため,材料表面に多数の気泡が確認できます.また,図2(a)に示す高密度材料と比較して図2(b)に示す低密度材料は全体的に気泡の大きさが大きく,これが切削加工後の表面粗さ,さらには導電性塗料の塗装後の表面粗さや塗料の粗密に影響すると考えられます.

導電性塗料は藤倉化成のドータイトを用いました.フィラー(塗料への導電性混合物)は銀入り銅合金(Ag-Cu)であり,本導電性塗料の電気抵抗率は \(5\times10^{-4}\ \Omega\cdot\mathrm{cm}\) です.図3に,各材料に導電性塗料の塗装を行った表面の実体顕微鏡写真を示します.図3(a)の高密度材料の塗装表面と比較し,図3(b)の低密度材料の塗装表面は明らかに粗く,空隙が大きいことが確認できます.

塗装表面の実体顕微鏡写真
図3: 塗装表面の実体顕微鏡写真((a) 高密度材料,(b) 低密度材料)

試験モデル

上記の成形材料と導電性塗料を用い,RCSを比較評価するための試験モデルを製作しました.図4に試験モデルの形状を,図5に各成形材料で製作した試験モデルの写真を示します.図5において,円形断面部は成形材料の表面状態を示すために塗装を行っていませんが,測定時には円形断面部も含めた全面塗装を行っています.図3の実体顕微鏡写真では表面状態の違いが明らかであるものの,肉眼ではほぼ表面状態の差異は確認できません.

試験モデルの形状
図4: 試験モデルの形状((a) 平面図,(b) 透視図)
試験モデルの写真
図5: 試験モデルの写真((a) 高密度モデル,(b) 低密度モデル.測定時は円形断面部を含め塗装)

測定評価

上記の試験モデルを用い,RCSの測定評価を行いました.表2に測定諸元を示します.後に周波数スケーリングの有効性検証を行うことを踏まえ,XバンドとKバンドの二種類の周波数帯において測定を行いました.水平・垂直偏波の送受信を組み合わせたHH, VH, HV, VVの全偏波を測定しています.アンテナ走査軌道は完全な円形であり,送受信アンテナは固定し,試験モデルをターンテーブルで回転させる逆合成開口レーダ測定を行いました.後述する航空機モデルの実測においても,表2と同一の測定諸元を採用しています.

項目XバンドKバンド
中心周波数10.2 GHz22 GHz
帯域幅4 GHz8 GHz
周波数間隔20 MHz20 MHz
偏波HH, VH, HV, VVHH, VH, HV, VV
角度範囲[0°, 360°][0°, 360°]
角度間隔0.4°0.4°
画像半径1 m0.5 m
画素サイズ4 mm2 mm
走査円の半径2 m2 m
表2: 測定諸元

図6にXバンドにおけるレーダ画像の再構成結果を,図7にKバンドにおけるレーダ画像の再構成結果を示します(いずれもHH偏波).測定モデルは回転対称形状の軸を画像の \(x\) 軸と一致させ,また半球部が \(x\) 軸の正方向に向くように配置しています.したがって,再構成されたレーダ画像は上下対称であることが期待されます.図6(a)と図7(a)に示す高密度モデルのレーダ画像はほぼ上下対称であるのに対し,図6(b)と図7(b)に示す低密度モデルのレーダ画像は明らかに上下非対称な画像となっていることがわかります.この一因として,材料加工後の表面粗さに起因する塗装の粗密や空隙の影響などが考えられます.

試験モデルのレーダ画像(Xバンド,HH偏波)
図6: レーダ画像(試験モデル,Xバンド,HH偏波.(a) 高密度モデル,(b) 低密度モデル)
試験モデルのレーダ画像(Kバンド,HH偏波)
図7: レーダ画像(試験モデル,Kバンド,HH偏波.(a) 高密度モデル,(b) 低密度モデル)

次に,図6と図7のレーダ画像から求めたRCSをそれぞれ図8と図9に示します.図中凡例の「Model-High」は高密度モデルのRCS,「Model-Low」は低密度モデルのRCS,「Simulation」は数値電磁界解析による計算機シミュレーションで求めたRCSをそれぞれ表します.

試験モデルのRCS測定結果(Xバンド,10 GHz)
図8: RCS測定結果(試験モデル,Xバンド,10 GHz)
試験モデルのRCS測定結果(Kバンド,20 GHz)
図9: RCS測定結果(試験モデル,Kバンド,20 GHz)

いずれの周波数においても,高密度モデルのRCSはシミュレーションと良好に一致しました.シミュレーションを遠方界RCSの真値としたとき,測定結果の平均誤差はXバンドで0.6 dB,Kバンドで0.9 dBです.一方で,低密度モデルでは特に図中の破線枠線部で示した角度範囲でシミュレーションとの差異が大きく,平均誤差はXバンドおよびKバンドともに2.0 dBでした.

以上の試験モデルの測定結果より,切削加工のみによる成形を行う場合,可能な限り密度が高く,加工精度が担保できる成形材料を用いることが肝要であることが明らかとなりました.なお低密度モデルであっても,加工コストを度外視すれば,切削加工後にモデル表面を研磨して平滑化することで高密度モデルと同等の結果が得られることが期待されます.

航空機モデルの製作と測定

測定モデル

導電性塗料を塗布した樹脂モデルにより完全な金属製モデルと同等のRCS計測が行えることを検証するため,金属製(アルミニウム製)と樹脂製の航空機モデルを製作しました.前節の検討結果より,樹脂製モデルの製作には高密度材料を用いています.加えて周波数スケーリングの有効性を検証するため,それぞれの材料について実規模の1/20の大きさに対応する航空機モデルと,そのモデルをさらに1/2に縮小した実規模の1/40の大きさに対応するモデルを製作しました.すなわち,1/20スケールのモデルを10 GHz(Xバンド)で測定したRCSと,1/40スケールのモデルを10 GHzの2倍の周波数である20 GHz(Kバンド)で測定したRCSが一致することを実験的に確認します.

航空機モデルの形状
図10: 航空機モデルの形状((a) 平面図,(b) 透視図,(c) 側面図,(d) 正面図)
名称材質スケール測定周波数
Model-AXアルミ1/20Xバンド
Model-AKアルミ1/40Kバンド
Model-RX樹脂(導電塗料塗布)1/20Xバンド
Model-RK樹脂(導電塗料塗布)1/40Kバンド
表3: 製作モデルと測定周波数

図10に製作した航空機モデルの形状を示し,表3に製作したモデルの一覧と各モデルの測定に用いる周波数を示します.なお樹脂製モデルについて,モデル前方の棒状部分のみは強度を確保するため金属製モデルと同様に金属を用いています.図11(a)に樹脂製モデルの塗装状況の写真を,図11(b)に完成した航空機モデルの写真を示します.

測定モデルの写真
図11: 測定モデルの写真((a) 塗装状況,(b) 完成モデル.写真提供:株式会社日南)

測定結果(Xバンド,1/20スケール)

測定諸元については表2と同一です.図12に測定状況の写真を示します.

測定状況の写真
図12: 測定状況の写真((a) 測定モデル,(b) アンテナ周辺)

図13と図14に,それぞれXバンドにおけるHH偏波とVV偏波のレーダ画像を示します.これらの図において,(a)は金属製モデル,(b)は樹脂製モデルに対応する画像です.図13の(a)と(b),図14の(a)と(b)をそれぞれ比較するとほぼ同一のレーダ画像となっており,樹脂製モデルでも金属製モデルと同等の測定結果が得られることがわかります.

航空機モデルのレーダ画像(Xバンド,HH偏波)
図13: レーダ画像(航空機モデル,Xバンド,HH偏波.(a) Model-AX(金属,1/20),(b) Model-RX(樹脂,1/20))
航空機モデルのレーダ画像(Xバンド,VV偏波)
図14: レーダ画像(航空機モデル,Xバンド,VV偏波.(a) Model-AX(金属,1/20),(b) Model-RX(樹脂,1/20))

また,HH偏波の画像である図13とVV偏波の画像である図14を比較すると,図14では図中の矢印部分に強い応答が現れていることが確認できます.これはモデル前方に水平に長い開口部が存在するため,開口の長手方向と電界が直交するVV偏波で開口からの散乱が生じるためです.さらに,図14(a)と(b)の矢印部分を比較すると,金属モデルの画像である(a)のほうが開口部からの散乱が強く生じていることが確認でき,これは後述するように算出されるRCSの差異として現れます.

航空機モデルのRCS測定結果(Xバンド,10 GHz)
図15: RCS測定結果(航空機モデル,Xバンド,10 GHz.(a) HH偏波,(b) VV偏波)

図13と図14の画像から算出されたRCSと数値電磁界解析によるRCSのシミュレーション結果を図15に示します.図15(a)に示すHH偏波のRCSは,(b)に示すVV偏波のRCSに比較するとシミュレーション結果とよく一致する結果となっています.図15(b)に示すVV偏波のRCSは,例えば±135°〜±180°の区間など,シミュレーション結果との差異が大きい部分が存在しますが,金属製モデルと樹脂製モデルの結果は正面方向(0°付近)を除いて一致する傾向が確認できます.すなわち,モデルの材質が異なっても測定結果に再現性があり,測定の不備によりシミュレーションとの差異が生じた可能性については除外できます.

シミュレーション結果との差異が生じる原因は現時点で明確ではありませんが,シミュレーション自体の特性,もしくは本稿で用いているレーダ画像方式のNFFFT法固有(あるいはBorn近似に基づく手法全般)の現象である可能性が考えられます.引き続き別のシミュレーション手法や他のNFFFT法との比較検討,コンパクトレンジを用いた実測との比較などを行い,原因究明を行う予定です.

測定結果(Kバンド,1/40スケール)

図16と図17は,それぞれKバンドにおけるHH偏波とVV偏波のレーダ画像を示し,また各画像から算出されたRCSを図18に示します.なお,図16と図17に示す画像の表示範囲は,Xバンドの画像である図13と図14の1/2となっていることに注意してください.結果に対する議論についてはXバンドと同様であり,より小型のモデルでXバンドのRCSを模擬可能なことがわかります.

航空機モデルのレーダ画像(Kバンド,HH偏波)
図16: レーダ画像(航空機モデル,Kバンド,HH偏波.(a) Model-AK(金属,1/40),(b) Model-RK(樹脂,1/40))
航空機モデルのレーダ画像(Kバンド,VV偏波)
図17: レーダ画像(航空機モデル,Kバンド,VV偏波.(a) Model-AK(金属,1/40),(b) Model-RK(樹脂,1/40))
航空機モデルのRCS測定結果(Kバンド,20 GHz)
図18: RCS測定結果(航空機モデル,Kバンド,20 GHz.(a) HH偏波,(b) VV偏波)

平均RCS誤差

航空機モデルの平均RCS誤差
図19: 平均RCS誤差(航空機モデル.(a) Xバンド,(b) Kバンド)

図19(a)はXバンド,図19(b)はKバンドの平均RCS誤差を各偏波・各モデルについて示したものです.全体的な傾向として,いずれも金属製モデルのほうが完全導体の電磁界シミュレーション結果と近いRCSとなっていることがわかります.しかしながら,両者の誤差の差異は1 dB未満であり,樹脂製モデルにより金属製モデルのRCSを良好に模擬可能であると考えられます.

以上の測定結果を総合すると,一部の角度で金属製モデルと樹脂製モデルとの差異が生じているものの,樹脂製かつ1/40のモデルにより,2倍の大きさに相当する1/20の金属製モデルのRCS測定を模擬可能なことが示されました.したがって,例えばより大きな1/5スケールの樹脂製モデルを50 GHzのミリ波帯で測定すれば,10 GHz相当の実規模RCSを同様に模擬できると考えられます.

まとめと今後の課題

本稿では,導電性塗料を塗布した樹脂製モデルと完全な金属製モデルのRCSの測定結果を比較し,金属と比較して安価な樹脂製モデルであっても金属製と同等のRCS測定が実現可能なことを示しました.特筆すべき点として,成形材料の密度が低すぎると加工精度が劣化し,切削表面が粗くなることで導電性塗料の塗布状態に影響を及ぼし,この結果RCS測定結果にも影響が出ることを実験により示しました.また,複数の縮小率のモデルを異なる周波数でRCS測定し,表面粗さのスケーリング無しに形状のスケーリングのみで大型目標のRCSが模擬可能であることを示しました.

今後の課題として,レーダ画像の生成が不要なNFFFT法 [5] など,今回製作した航空機モデルを基本として各種のNFFFT法の有効性検証を行う予定です.本文中で言及したとおり,画像方式NFFFT法の結果とシミュレーション結果には差異が生じています.このため,モデルを実際に遠方界に設置して直接RCSを測定した結果,あるいはコンパクトレンジを用いて平面波照射を行ってRCS測定を行った結果との比較検討が必要です.また,本稿では1/20規模モデル測定にとどまりましたが,今後は数メートル規模の大型航空機モデルをミリ波帯で測定し,本手法を含めた各種のNFFFT法の更なる有効性検証に加え,バイスタティック構成への画像方式NFFFTの拡張など,継続的にRCS測定法の高度化に取り組むことを予定しています.

謝辞

著者らは本研究で用いたモデルの設計・製造において多くのご支援をいただいた株式会社日南に謝意を示します.

参考文献

  1. T. Vaupel and T. F. Eibert, “Comparison and application of near-field ISAR imaging techniques for far-field radar cross section determination,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol. 54, no. 1, pp. 144–151, Jan. 2006.
  2. A. Osipov et al., “An improved image-based circular near-field-to-far-field transformation,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol. 61, no. 2, pp. 989–993, Feb. 2013.
  3. T. Watanabe and H. Yamada, “Far-field radar cross-section determination from near-field 3-D synthetic aperture imaging with arbitrary antenna scanning surfaces,” IEEE Trans. Antennas Propag., vol. 70, no. 7, pp. 5831–5840, July 2022.
  4. E. F. Knott, “Scale-model testing,” in Radar Cross Section Measurements, Boston, MA: Springer, 2012, ch. 12, pp. 482–512.
  5. 赤嶺賢彦,戸村崇,広川二郎,「円筒波展開に基づく重み関数を用いた一次元円走査レーダ散乱断面積近傍界遠方界変換」,信学技報,vol. 122, no. 87, EMT2022-2, pp. 7–12, 2022年6月.

【発表情報】
渡邉卓磨,赤嶺賢彦,「導電性塗料を塗布した樹脂製縮小モデルのレーダ散乱断面積測定」,電子情報通信学会 宇宙・航行エレクトロニクス研究会(SANE),信学技報,SANE2022-50,2022年11月.

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