
背景と課題
レーダ散乱断面積(Radar Cross-Section: RCS)は,レーダで目標を照射したときに,目標がどれだけの反射をレーダに返すのかを表す指標で,レーダの分野では基本的かつ重要な量です.例えば車載レーダの設計では,車両や歩行者からおおよそどれだけの強さの反射があるのかを知っておくことが,送信電力やアンテナの設計に役立ちます.
ただしRCSは目標の十分な遠方(遠方界)で定義される量であり,遠方とみなせる距離は目標が大きくなるほど,またレーダ波の波長が短くなるほど長くなります.幅1 mの目標を10 GHzの周波数で測定する場合,必要な距離は66 mにも及び,屋外であっても現実的でない場合があります.
提案手法
この制約を信号処理によって緩和する技術が,近傍界遠方界変換(Near-Field-to-Far-Field Transformation: NFFFT)です.当研究室ではレーダ画像方式のNFFFTに着目しています.これは近傍で測定した電磁界からレーダ画像を生成し,その画像を電磁波の放射源とみなすことで,遠方界を含む任意の位置での電磁界を計算するという手法です.
従来のレーダ画像方式NFFFTは,アンテナの走査軌道が直線や平面,円や円筒といった単純な形状に限られていました.当研究室ではこの測定理論を一般化し,任意の曲面上でのアンテナ走査に対応できるように拡張しました.これにより,測定の自由度を大幅に高めることができます.
検証結果
ポスターでは,計算機シミュレーションと実験の両面から提案手法の有効性を示しています.シミュレーションでは2個の点散乱体を配置した条件で比較を行い,従来手法では像がぼやけて理論値との差も大きかったのに対し,提案手法では画像上で散乱点の位置が明確になり,得られたRCSが理論値とよく一致することを確認しました.
実験では,実物大の1/20スケールのアルミ製航空機模型を回転台に設置し,円筒走査によるRCS測定を行いました.推定されたRCSは数値電磁界解析の結果とよく一致しており,従来手法と比較しても推定誤差が小さくなることを確認しています.
今後の展望
今後は本測定手法をドローン搭載合成開口レーダへ応用し,実験室内に収容することが難しい大型目標のRCS測定を実現することを目指しています.
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